サマリウム金属化合物で見つかった磁場に強い磁気秩序  〜強い価数ゆらぎの効果〜

 希土類・アクチノイドを含む化合物は電子間の相互作用が強い系として知られています。その中でSmを含む化合物は、SmX (X=Te, Se, S)やSmB6など価数が変化しやすい物質として知られています。また低温で軌道の自由度が残る場合があり、SmRu4P12で議論されているように高次の多極子が秩序する場合があります。さらにSmOs4Sb12では通常とは異なる磁場に鈍感な重い電子状態が観測され、近年盛んに議論されています。

 このような状況のもと、我々は立方晶系SmTr2Al20 (Tr = Ti, V, Cr)の純良単結晶の育成に成功し、この系が価数揺動を示し、低温で磁場に鈍感な磁気秩序を示すことを発見しました(図1)。また、Sm系には非常に珍しく近藤効果が明瞭にみられ、たとえば、電気抵抗率が―logTで上昇する振る舞いを示します。

 この傾きと磁化率の解析から、伝導電子との混成はTi < V < Crの順に大きくなり、特にV, CrではSmの価数が強く揺らいでいることがわかりました。これはTrイオンの半径が小さくなることで、化学的な圧力が加わったことに起因すると考えられます。このような価数ゆらぎが磁場に依存しない比熱の起源になっている可能性があり、今後の研究が期待されます。さらに興味深いことに、転移温度はTi, V, Crの順に6.4 K, 2.3 K, 1.8 Kと下がっていることがわかりました。これは混成が強くなったことにより、磁気量子臨界点に近づいたことに由来すると考えられます。Sm化合物で量子臨界現象に関する研究は進んでおらず、今後この系を中心に新しい現象が発見される可能性が期待されます。

specific heat of SmTr2Al20

図1.SmTr2Al20 (Tr = Ti, V, Cr)の比熱の温度依存性。 矢印は磁気転移温度(6.4 K (Ti), 2.3 K (V), 1.8 K (Cr))を表す。 9Tの磁場中のデータ(白抜き)はゼロ磁場のデータ(色塗)とほぼ重なっており、磁場に鈍感な振る舞いを示していることがわかる
[1] Akito SAKAI and Satoru NAKATSUJI, Physical Review B 84, 201106(R) (2011).

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