■ スピンカイラリティと異常ホール効果

下図のように局在スピンが互いに傾いて立体的なスピン構造もち、 この局在スピンSと伝導電子は強くフント結合(JH)しているとする場合を考えます。 このとき伝導電子がサイト間を飛び移るごとに、そのスピンの方向は局在スピンの方向に強制的に向かされます。 このスピンの向きの変更を通じて、伝導電子は局在スピンが単位球面上につくる立体角Ωとb=Ω/2の関係にある仮想的な磁場を感じることになります。 このΩをスピンカイラリティーとよび、これが有限であるためにはS1S2×S3 ≠ 0が要請されます。 この効果はベクトルポテンシャルによって誘起されるアハラノフ・ボーム効果に対応しており、 伝導電子は各サイトを移動する度にその波動関数に位相因子がかかることで、ベクトルポテンシャルつまりは仮想的な磁場を感じていることになります。 また、これは物質の内部で実効的な磁場がスピンの向きで作れるということであり、 場合によってはその強さが1万テスラのオーダーにも相当する巨大な値になりうるとされています。 また、この際、異常ホール効果が現れることが理論的に期待されており、 その際の異常ホール伝導度は、上記のスピンカイラリティ、即ち、S1S2 × S3に比例することが議論されています。 これまでは、多くの磁性体で、異常ホール効果の経験則:ρxy =R0B+4πRsMが成り立つことが知られており、 通常、ホール抵抗ρxyの異常成分は磁化Mに比例するものと考えられています。 しかし、このスピンカイラリティによる異常ホール効果に基づくと、 従来型とは全く異なる振る舞いが期待され、 極端な場合には、磁化、磁場がない状況でも自発的にホール電流が流れるというような大変興味深い現象を生む可能性を秘めています。

図: 局在スピンS1S2S3で作られる三角形を貫く仮想磁場b123b123 = (S1S2× S3)n123と定義される。ここでn123は三角形の法線ベクトルである。

前のページに戻る

研究テーマに戻る



大学院生・ポスドク募集

私たちの研究室では大学院生、ポスドクを受け入れております。大学院入学希望者、ポスドク希望者の方はこちらを参照してください。